ToolsOnAir / CANTEMO / Archiware P5 事例 : WNMU-TV 13

米国ミシガン州マーケット市のPBS(公共放送サービス)系列放送局、WNMU-TV 13は、北ミシガン大学(NMU)構内に局設備を構え、ミシガン州のアッパー半島地域およびウィスコンシン州北東部にPBS制作の番組および自主制作番組を放送しています。

PBS系に属する他の放送局同様に、WNMU-TV 13は地域社会のなかで重要な役割を担っています。次の世代の放送業務従事者の育成も行っています。たとえば、毎日制作される15分番組の「パブリック・アイ・ニュース」は、企画制作から送出に至るまでのすべてがすべて学生によって運用されています。報道番組のディレクション、企画・原稿執筆、取材、撮影、収録、アナウンス、そして放送までのすべての業務が学生によって実施されています。

既存放送設備の旧式化、製品終息のため更新を検討

2014年、同局のグラント・ガストン技師長は、既存のSundance Digital製自動送出システムとOmneonサーバーで構成された放送設備の更新を模索し始めます。当時はSD2チャンネルとHD1チャンネルを24時間365日放送していました。既存のシステムは製品としての提供期間の終了に近づいており、継続運用は妥当でないと判断されました。

【ToolsOnAir社】 ToolsOnAirをお選びいただくまで、ずいぶん多数のソリューションを検討されたと聞いていますが、具体的名を挙げていただけますか?

【チャンネル13 ガストン氏】 提案を多数取り寄せて、選択肢を検討しましたが、いずれもしっくり来るものがありませんでした。それ以外に、他のCentralCastネットワーク網の傘下に入ることも真剣に検討しましたが、一見条件が良さそうな提案であっても、長期的に良い選択ではないとの結論に至りました。

また、H社のソリューションも検討しました。ラックに搭載して運用できるオンプレミス(買取り導入)型のCentralCastシステムで、自動送出システム「N」は運用に問題なさそうですが、古めかしい造りでインターフェイスが荒削りだと感じました。

最後に、我々自身でラックに収まる放送局システムの構築を試みました。G社のプラットフォームで検討をしたのですが、結局これも予算を大幅に超過するものだと判明します。

災害による放送設備の被害、業務継続の危機

2015年の1月21日のことです。大学構内の給水管の破裂とそれに伴う電力不足により、なんとか運用していた既存のシステムに甚大な被害が発生しました。幸い大部分は修復できましたが、事態は行き詰まりました。最も深刻なのは新しい自動送出装置と共有ストレージが必要になったことです。

最大の問題が予算です。保険その他によりかき集めらた資金は日本円にして5000万円程度しかありません。他の放送局や業者に相談してみても、「極端に妥協しない限り、1億2千万円以下では何もできない」と口を揃えて言われました。たとえば、それまでの合計3チャンネルを1チャンネルに減らしたり、予備系等を切り捨てて冗長性を犠牲にするといった方法です。それでも私は、従来のシステムの能力から退行することなく、我々の放送局の予算に合った最新のソリューションを見つけ出してみせる自信がありました。

【ToolsOnAir社】 理想のシステムへの非常に明確な考えをお持ちだったと聞いています。どのようなシステムを思い描いていましたか?

汎用機器を組み合わせたソリューションを模索

【チャンネル13 ガストン氏】 既成品や汎用機器を組み合わせることで構築されたソリューションを考えていました。
24時間365日の放送業務に耐える堅牢な機器で構成し、しかもそれぞれの部分はすぐに取り替えられる数十万円以下の機器で構成されるようなものです。各機器は汎用品ですから、すぐに交換できるのはもちろん、システム全体の予備パーツとして冗長性を強化でき、さらには別の用途に使い回しが効くという利点も得られます。

最も重要なのは、システム全体を我々自身で構築し、メンテナンスができるということです。システムの維持運用に関して可能な限り自己完結でき、ソリューション全体を業者の言いなりではなく自分達自身の手でコントロールできます。たとえばBXF・メタデータ規格に準拠し、かつクローズキャプション対応のインジェスト、送出をしながらマルチフォーマットビデオ方式への対応を迫られた場合でも対応することができるのです。

こうした構想をシステムインテグレーターであるAVIシステムズ社のフランケンシュタイン氏に相談しました。同社は既成品を組み合わせるシステム構築に取り組んでいただめ、私の意図をすぐに察してくれました。早速ToolsOnAir社に取り次いでくれ、さらにToolsOnAirは同社の開発陣とCantemoやArchiwareといったパートナー各社を紹介し、私のシステムに対する考え方に合致しているかを説明してくれました。

HD 2チャンネル、SD 1チャンネル、さらに将来の4K化にも対応

すべての送出システムはAppleのMac miniで構成され、入出力デバイスとしてAJA KONA 4が組み合わされています。合計6セットを用意し、主系統と予備系統で3チャンネル分を確保しています。ToolsOnAirの送出ソフト「just:play」はBXFスケジュールインポーターと連携し、kinetic:bridgeにより、ProTrack営放ログを生成します。

インジェストシステム「just:in」はApple Mac Proにインストールされ、 AJA io4Kを入力デバイスとして使用します。収録されたデータはすべてメディアアセット管理システムである「Cantemo Portal MAM」に直接取り込まれ、Telestream Episode Engine Serverと連携してトランスコードが行われ、LTOドライブが接続されたアーカイブシステムのArchiware P5と連携してアーカイブされます。すべてのメディアは10ギガビットネットワークで接続されたToolsOnAirのNASにインジェストされます。

設備更新から1年を経て

チャンネル13の危機から1年が経過し、現在では2チャンネルの1080iに加え、SDにダウンコンバートされたチャンネルを1チャンネルを24時間365日放送しています。今回のシステム更新に先駆けて、HDにアップコンバートした放送を行っていました。このシステムはHDへの移行を実現しただけでなく、ハードウェアとソフトウェアが将来の4Kに対応できることを実証しました。

ToolsOnAirの送出ソリューションは、標準で映像と独立した複数の音声チャネル、2レイヤのグラフィックレイヤの送出が可能です。グラフィックレイヤはアニメーション、静止画のほか、インターネットからRSSフィードを取り込んで自動連携したグラフィックの表示にも対応しています。また、EAS(緊急警報放送 Emergency Alert System)にも連携させています。とにかく、予算以上に充実した放送業務を実現させることができました。