Silverstackを使ったARRIRAW ワークフロー

Silverstack 3.3以降ではARRIRAWカメラに高いレベルで対応し、ARRIRAW収録映像の品質チェック、再生、メタデータ管理といった、オンセットでの各種作業効率を高めました。ARRIRAW対応により、下記が実現します。

  • 各シーケンスごとに、すべてのメタデータの読み込み。スマートフォルダやパスワイルドカードの使用。
  • ARRIRAW映像のネイティブ再生
  • アナモルフィック撮影映像などのアスペクト比補正、鏡像反転、LogCからRec.709への変換などの各種映像変換
  • ProResやH.264へのシーケンスのトランスコード


複数コピー先ターゲットへの高速チェックサム検証を伴ったバックアップや、レポート機能など、従来からのSilverstackの機能についても、ARRIRAWに対応します。

この記事はSilverstackを使ったARRIRAWワークフローの基礎的なガイドです。膨大な撮影データが発生するARRIRAWを使った映画製作、映像制作には、時間およびコストの節約のために信頼できる管理ツールが不可欠です。さらにMHL(メディアハッシュリスト)チェックサム検証機能を利用することで、収録ストレージメディアのすべてのファイルと複数のバックアップが完全に同一のデータであることを保証することができます。

1- オフロード (Offloading)

撮影後、まずデータを消失リスクから守るためになるべく早くバックアップを取り、映像データを保全したいことでしょう。最も一般的なARRIRAW収録手段はCodexレコーダーであり、Codexトランスファーステーションとの連携が欠かせません。

Codex VFX source selectionCodex VFX source selection

レコーダーのキャプチャドライブの容量が不足し、収録に使えなくなる時間を最短に抑えるための最良の方法は
映像データをまず高速なミラーリングRAIDにコピーし、さらに高速なRAIDからシーケンスをLTFSベースのボリュームにアーカイブすることです。安全上の理由により、一旦コピーとLTFSによるアーカイブの両方を済ませた上でのみ、キャプチャドライブの撮影データを消去して空き容量を確保し、再利用することを推奨します。

Silverstackはすべてのコピープロセスに対して、オリジナルのデータから改変されていない事を裏付け、ポスプロでの各工程にわたってデータの一貫性を担保することができるチェックサム「MHLファイル」を生成します。

2- 品質チェック (Quality check)

映像データがオフロードされ、Silverstackのライブラリ上に登録されたら、ARRIRAWのままネイティブ再生して各シーケンスに収録ミスがないかどうか品質チェックを行うことができます。ビジュアルコントロール(visual controls)が、露出やクリッピングのチェックに役立つことでしょう。

Visual controls in Silverstack Silverstackのビジュアルコントロール(Visual controls)

 

撮影素材に画像変形(Image transformations)を適用して、クオリティチェック作業を加速することもできます。LogC to Rec.709カラーフィルタがデフォルトで適用されますが、バイパスしてLogCのままでの再生もできます。アナモルフィックレンズを使用した映像のアスペクト比を補正する(Anamorphic de-squeezing)や、鏡像反転も必要に応じて適用できます。

コメント、ラベル、レーティング(評価付け)もメタデータとして各クリップに付与されます。スクリプトノートもメタデータに書き込むことができます。これらのメタデータ情報は、後々のVFX工程で非常に便りになります。

3- レポート機能 (Reporting)

Silverstackは撮影日のデイリポート、クリップリポート、クリップリポート、ボリュームリポートを出力し、ポストプロダクションチームに進行中の制作に必要な報告書を手渡すことができます。各レポートにはクオリティチェックで付記された有用なメタデータを含むので、撮影以降の各工程で便利に利用することができます。

4- トランスコーディング (Transcoding)

シルバースタック3.0から加わったトランスコード機能もARRIRAW素材で利用できます。ARRIRAWシーケンスをQuickTime ProResやH.264クリップにトランスコード出力できるので、撮影現場でiPadなどのタブレット機器で手軽にディレクターがプレビューすることも可能です。アスペクト比補正やRec.709変換などのトランスフォームフィルタが適用されている場合は、これらのフィルタを反映してトランスコード出力されます。

Transcoding presetsTranscoding presets

Silverstackは高品質なProResクリップの出力に対応しているので、トランスコードで出力されたH.264やProResムービーをオフライン編集に活用することができます。 ProRes 422を選んで出力して、編集をするだけで扱いやすいコーデックでのオフラインが開始できます。

次の手順では、トランスコードされたすべてのクリップに各種素材データの付帯情報を引き継ぐことができます。

5- メタデータトランスファー (Metadata transfer)

トランスコードが完了したら、クオリティチェック工程で入力した、スクリプトとコメント、ラベル、レーティング評価などの有用な情報をエクスポートする段階です。ALEファイルの生成段階で、ファイルネームとメタデータの照合により行われます。どのような情報を選択するかを設定する各種選択項目が用意されています。初設定を選んだら、トランスコードで出力されたファイルにメタデータを引き継ぐことができます。トランスコードされたファイルにメタデータが引き継がれることで、編集作業を行うエディターに編集の手がかりとなる注釈などの情報をテイクごとに引き継ぎ、編集以降のワークフローを円滑にします。

6- コンフォーム (Conform)

ARRIRAW対応により、SilverstackのEDLコンフォーム機能はさらに重要性を増しました。ARRIRAW収録のプロジェクトではデータ量が膨大なものとなるからです。
SilverstackのEDLコンフォーム機能を使えば、ディスク容量を大幅に節約し、コピー時間を短縮することができます。EDLファイルをもとに、Silverstackのクリップライブラリが必要なクリップだけを特定し、使用されている素材データのみに絞り込んで、たとえばVFX作業など次の工程にコピーして受け渡すことができます。

CDL import for conformCDL import for conform

オフライン編集が完了したら、EDL (CMX3600準拠)の生成が必要です。このEDLはSilverstackにインポートすると新規ビンが自動的に生成されます。この新規ビンには編集作業で使用されるすべてのクリップ参照情報が含まれています。ビンの複製をバックアップとして、VFX工程に渡すディスクにコピーします。